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たばこについて

たばこについてのあれこれ。

2025.07.14

~ペリクとは~

【伝統と発酵が織りなす芳香の魔法】

ペリクは、たばこの世界でひときわ個性を放つ唯一無二の存在です。多くのブレンドにおいて、深みと微妙な陰影を加える「調味料」として重宝されていて、その存在感は決して脇役にとどまりません。長きにわたり受け継がれてきた発酵技術が込められたペリクは、パイプたばこ製造において今日もなお、欠かすことのできない一角を担っています。

(ツゲラオワーカーとマーク・ライアン氏)

【製造の妙技】

ペリクのユニークさは、単にタバコの品種にとどまらず、製造そのものが芸術の域に達している点にあります。

まず晩冬に温室で苗が育てられ、春になると畑へと移されます。夏に収穫され、空気乾燥を経て、いよいよ独自の発酵工程へと進みます。乾燥後に水分を加える工程が待っています。これは単なる加湿ではありません。「葉をしっとりと柔らかくし、手作業で中骨を丁寧に剥がして束ね、オーク製ケンタッキー・バーボン樽へと詰めていく・・・」

詰め込まれたたばこは酵母や微生物の力を借りて発酵を始めます。圧力は25〜30トンという驚異的な強さで、最低でも1年間かけて乳酸発酵します。

途中、「ターン」と呼ばれる工程でたばこが取り出され、空気にさらされた後、再度圧力をかけるというサイクルが最低3回繰り返されます。

完成した葉は、アンモニア分が抜け、チェリーやチョコレート、キノコや醤油のような芳醇な香りを宿す、まさに黒い宝石のような存在となるのです。

(完成品のペリク)

【味わいの錬金術】

ペリク単体では強すぎるため喫煙は困難を極めますが、他の葉との相性によってその表情を変えることが知られています。「ペリクはうま味のかたまりである」肉や熟成チーズ、キノコといった重厚な風味になぞられます。

バージニアとの組み合わせでは、その自然な甘さを引き立て、ほのかにスパイシーなアクセントを添えます。ターキッシュとブレンドすれば、酸味とスパイスのハーモニーが広がり、ラタキアと合わせれば、スモーキーで深みのある奥行きが増します。

ブレンドにおける配分次第でその印象は大きく変わります。少量ならばプラムのような甘酸っぱさを、増量すればキノコや熟成ソースのような複雑な風味が加わります。

(ラオスのタバコ畑)

【希少性と継承】

ペリクが製造されている場所は、アメリカ・ルイジアナ州セントジェームス教区、ラオス・パクセー市の世界でたった2か所です。

セントジェームス教区で作られたぺリクを「ポシェ・ペリク」または「ルイジアナ・ぺリク」と呼びます。すべての行程を熟練の技によってその品質が保証さます。

かつて絶滅の危機に瀕したペリクは、2005年にマーク・ライアン氏によるLAポシェ・ペリク・タバコ社の買収によって蘇生の道を歩み始めました。当時はたった1樽しか生産されていなかったペリクが、現在では年間36トンにまで増産され、世界中に供給されています。

(TPPの品質を確認するマーク・ライアン氏)

【世界で2番目のぺリクTPPの誕生】

柘製作所は以前から親交があったマーク・ライアンとの雑談で「これからぺリクは増々需要が見込めるが、増産が難しい」という話がでまして、「ならば柘製作所で作らせてください」と切り出しました。マークは「今まで同様の申し出はいくつもあったが、すべて断ってきた。しかし柘製作所がやりたいのであれば、私がもっているノウハウをすべて教える」となり、正式にぺリク製造の許可を得ました。柘製作所は2020年よりラオスに自社工場を作り、そこで手巻きたばこを製造していました。ルイジアナからぺリク用の種をラオスへ持って行き、現地の契約農家にお願いし、たばこの栽培から開始しました。

米国ケンタッキーからバーボン樽も輸入し、準備を整えました。収穫を終えたたばこを樽に詰め、3回目のターン作業に合わせ、ルイジアナからマーク・ライアンをラオスに招聘しました。完成一歩手前のたばこを確認し、「これならポシェ・ぺリクと名乗っても良い」と、お墨付きをもらいました。本家と区別できるよう、名前をT.P.P(ツゲ・ポシェ・ぺリク)と命名し、世界で2番目のぺリク製造会社が誕生しました。

(出荷前の原料葉TPP ツゲ・ポッシェ・ペリク)

出荷前の原料葉 TPP ツゲ・ポッシェ・ペリク)

【終わりなき香りの旅】

ペリクとは、単なる原料葉ではありません。工芸作物です。それは文化であり、技であり、家族の伝統であり、ある人にとっては人生そのもの。ひとつのブレンドに無限の表情を与えるペリクの存在は、今もなおパイプ愛好家たちを虜にし続けています。

近年葉巻にもぺリクをブレンドし、独特の個性豊かな香りの葉巻も作られています。

幾多の困難を乗り越え、喫味の旅を続けるこの黒い葉は、たばこの世界における真の遺産と呼ぶにふさわしいものです。

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