「呼び火」煙管喫煙時の言葉
落語の「普段の袴」に「呼び火(し)」という言葉が出てくる。これは遠火でたばこに着火させる時に使う言葉。落語の中では、いいたばこは刻みが細かいので、火入れの炭に近づけただけで火が移る、と言っている。
最近の落語家は、このくだりを説明しながらするか、まったく飛ばしてしまうこともある。ユーチューブに先代の林家正蔵の「普段の袴」がアップされている。それを見るとこのあたりをさらっと語っているのが判る。半世紀ほど前は、説明をしなくても聴き手が理解できたのだろう。
ちなみに、江戸っ子は「ひ」という発音を嫌っていた。「ひ」は江戸時代火事が多かったことが原因でしょう。火入れは「しいれ」、火鉢は「しばち」、緋色は「しいろ」等といつのころからか「ひ」の発音を「し」にしてしまった。江戸消防でも「ひ組」はない。勿論「へ組」もない。
あっしもいまだに区別がつかない時がある。一番苦労するのがワードで文章を作っている時だ。ハナに「ひ」のつく言葉が出てくると緊張する。「し」が出てくると余計に緊張する。新聞を「ひんぶん」と入れてしまったことがある。今使っているワードに登録してある単語がある。火入れ(しいれ)、火箸(しばし)、非常(しじょう)、品(しん)、非常識(しじょうしき)、コーヒー(こーしー)、百(しゃく)、引く(しく)、披露(しろう)等。