村田の煙管は「いい煙管」の代名詞
日本で生まれた喫煙具といえば煙管。昔は自らのステータスやファッションセンスを表すものとして愛用する人も多かった。煙管の製造や販売、手入れなどをする店もあちこちにあったものだが、なかでも有名店として異彩を放っていたのが「村田煙管」だ。
昭和30年代頃まで、村田煙管店は京都をはじめ、ここ浅草や池之端、両国、小岩などに店舗があった。村田の煙管は雁首の細さや吸い口の絞り具合が絶妙で、えもいわれぬ色っぽさがある。素材の真鍮に施された装飾にも江戸時代後期から明治にかけて発達した金属工芸技術が反映されているのが見て取れて興味深い。当時は金属や羅宇の色付けにも植物や海藻など自然界にある素材を使っていた。現在のように化学的処理が発達していなかった時代であった。村田の煙管には、こうしたものづくりの原点にある当時の技術が凝縮されているように思う。
あっしは主に戦前から昭和30年代に作られたものをコレクションしている。これらは正真正銘の村田煙管だが、巷には偽物も多く出回っている。なかには陳腐なラベルの「村田」があるのでおもしろい。
村田に関しては文献がほとんど残っていないため、どう本物を見分ければいいのか、正直よくわからないというのが実状だ。だから偽物が出回るのかな。困ったものだ。